
The Economistは2025年7月16日、メキシコのビッグマック価格を通じ為替と経済実態を分析した。
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ビッグマック価格に現れたメキシコ経済の実情
The Economistが発表した2025年7月版「ビッグマック指数」によれば、メキシコのビッグマック価格はラテンアメリカで9番目に高い水準にある。米国基準価格6.01ドルと比較し、メキシコの物価水準は相対的に高めでありながら、為替レートに反映されていない通貨価値の割安感が指摘されている。地元メディアThe Economistによると、こうした価格差は購買力平価からの乖離を示唆し、メキシコ経済の現状を理解する重要な材料だ。
メキシコ経済は近年、国内インフレ率の上昇とメキシコペソの対ドル安傾向という二重の圧力に直面している。最新データでは、年間インフレ率は5.1%を記録し、Banxico(Banco de México:メキシコ中央銀行)が目標とする3%±1%のレンジを上回る水準だ。実質賃金の上昇が遅れる一方、日常消費財価格の上昇が庶民の購買力を圧迫している。
為替と購買力平価の乖離が投資判断に与える影響
現在のメキシコペソは、ビッグマック指数によれば「過小評価」とされる状況だが、これは必ずしも投資環境の優位性を意味するわけではない。The Economistは「物価水準と通貨価値の乖離は、購買力の低下を補う要因にもなるが、構造的問題を抱える国ほど価格調整が起きにくい」と指摘している。
特にメキシコでは、食品・外食関連物価の上昇が著しい一方で、労働市場の非公式経済比率が高く、賃金上昇のペースが鈍化していることが特徴だ。OECDの報告書によれば、メキシコ労働人口の約55%がインフォーマルセクターに従事しており、安定した所得増加の恩恵を受けにくい状況にある。
こうした背景により、メキシコ国内で消費者が負担する生活コストは上昇しており、ビッグマック1個の価格が示す通貨評価以上に「実際の生活感覚としての物価高」を感じやすいという現状がある。
インフレ抑制と為替安定策を進めるメキシコ政府
メキシコ政府とBanxicoは、インフレ抑制を最優先課題とし、政策金利を長期的に据え置く金融政策を採用してきた。2025年7月現在、政策金利は11%であり、高金利政策により国内資金需要を抑えつつ外資流入を維持する狙いだ。しかし、国際市場の不安定化や米国の金利政策の影響を受け、メキシコペソの相場は対ドルで不安定な推移を続けている。
民間エコノミストの見方では、こうした政策は短期的には為替安定を促進する一方で、国内消費の冷え込みや投資意欲の低下を招くリスクがあるとされる。特に食品価格が実際に上昇し、ビッグマック価格にまで反映される状況は、メキシコ国内の購買力低下を象徴する指標として注目される。
また、今後米国大統領選挙を控え、米国の関税政策や通商条件が不透明であることも、メキシコの為替相場に大きな影響を与える可能性がある。こうした外部要因への対応も、メキシコ経済の脆弱性を浮き彫りにする要素となっている。
物価上昇下で生活コスト圧力が強まるメキシコ市民
メキシコ国内の消費者にとって、ビッグマック価格が高いという事実は単なる象徴にとどまらず、日々の生活実感と直結している。国立統計地理情報院(Inegi)の2025年6月調査によれば、都市部世帯の食品支出は前年同月比で7.8%増加しており、食料品価格の上昇ペースが全体インフレ率を上回っている。
とりわけ外食産業では、人件費・原材料費の高騰が顕著であり、メキシコ市内のファーストフードチェーンにおける平均価格は過去1年で約9%上昇したとされる。この物価上昇が賃金上昇を追い越す状況は、実質購買力を低下させ、消費マインドの冷え込みにもつながっている。
The Economistは、ビッグマック指数はあくまで一つの目安に過ぎないとしながらも、「現地経済の断面を知る有効なシグナル」と評価している。単純な為替指標では捉えきれないメキシコ経済の多面的な課題を、こうした消費者物価の変動が浮き彫りにしている。

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