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メキシコ、最低賃金を12%引き上げ—企業と労働市場への影響
メキシコ政府は2025年1月1日から、全国の最低賃金を12%引き上げると発表した。これにより、一般地域では月額8,475ペソ、北部国境自由地帯(Zona Libre de la Frontera Norte)では12,764ペソとなる。この大幅な賃上げは、労働者の生活向上を目的としたものであるが、企業の人件費増加や給与体系の見直しを迫る要因ともなる。
最低賃金引き上げの背景
メキシコ政府は、労働者の購買力回復と貧困削減を目的として、最低賃金の継続的な引き上げを進めている。特に2018年以降、最低賃金は毎年約10%以上のペースで上昇しており、2025年もこの方針が継続された。
メキシコ労働省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)によると、最低賃金の引き上げは国内消費の活性化に寄与し、特に低所得層の生活向上につながるとされている。一方で、企業側はコスト負担の増加を懸念しており、特に人件費が占める割合の大きい中小企業にとっては大きな課題となる。
企業への影響—給与体系の再評価が不可欠
最低賃金の上昇により、特にエントリーレベル(entry-level)の職種と一般職の給与格差が縮小している。
Mercer Méxicoの調査によれば、メキシコの一般的なオフィス業務、事務職、メンテナンス業務の給与は現在10,241ペソであり、最低賃金との差はわずか約20%となっている。また、北部国境自由地帯では、最低賃金12,764ペソに対し、これらの職種の平均給与12,964ペソと、差はわずか3%にまで縮小している。
この状況は企業にとって二つの大きな課題をもたらしている:
- 給与の逆転現象の防止—従業員のモチベーション維持のため、給与構造の見直しが求められる。
- 人材確保のための新たな施策—給与だけでなく、福利厚生やキャリアアップ制度を強化する必要がある。
多くの企業は、短期的な対応として「生産性向上のためのインセンティブ制度の導入」を進めており、ボーナスの支給頻度を四半期単位から月単位に変更するなどの対策を講じている。
低賃金職種への影響と賃金格差の縮小
最低賃金の上昇は、特に小売業(retail)や飲食業(comida rápida)の労働者に大きな影響を与えている。これらの職種の給与はもともと最低賃金に近く、現在ではほぼ同水準となった。
また、監督職(supervisor)や技術職(técnico especializado)に関しても、最低賃金の上昇により、従来の給与格差が縮小。かつては最低賃金の2倍程度の給与が支払われていたこれらの職種も、今後は給与体系の見直しが不可欠となる。
EY MéxicoのLuis Peña氏によると、「最低賃金がエントリーレベルの給与を圧迫しており、企業は給与体系の見直しを迫られている。特に昇進後の給与差が小さい場合、従業員のキャリアアップ意欲が低下するリスクがある」と指摘する。
今後の展望と企業の対応策
企業は最低賃金の上昇に伴い、以下の施策を進めている:
- 給与以外の報酬制度の導入(柔軟な勤務制度、育成プログラムの充実)
- 生産性向上に基づくインセンティブ支給(短期的なボーナス制度の強化)
- 給与体系の見直し(特に中堅職への昇給策)
一方で、政府は企業の負担を軽減するための施策を検討しており、中小企業向けの税制優遇措置や労働市場改革が議論されている。

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