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トランプ関税提案にEU反発、通商協議前に緊張高まる
アメリカのドナルド・トランプ大統領が、2025年6月1日から欧州連合(EU)からの輸入品に対して50%の関税を課すことを提案したことを受け、Comisión Europea(欧州委員会)は5月23日、アメリカに対して説明を求めた。両者は今後予定されている通商協議を前に、深刻な緊張関係に直面している。
トランプ氏の関税案で市場に動揺、EUは「明確な説明」を要求
今回の提案は、同日午前9時(CDMX時間)に予定されていたMaros Sefcovic(マロシュ・シェフチョビッチ)欧州委員会通商担当官とJamieson Greer(ジェイミソン・グリア)アメリカ通商代表部代表との通話の直前に発表された。
Comisión Europeaは公式コメントを避けたものの、協議後に正式な立場を表明する方針を示した。一方、金融市場は即座に反応し、ユーロ圏の株価指数は下落、ユーロはドルに対して値を下げた。ユーロ圏の国債利回りも急低下するなど、動揺が広がった。
ドイツの投資銀行Berenbergのチーフエコノミスト、Holger Schmieding氏は、「この動きは通商摩擦の大きなエスカレーションであり、EU経済だけでなくアメリカ経済にも打撃を与える恐れがある」と分析した。
トランプ政権の主張:貿易赤字是正と規制緩和を要求
アメリカ政府はEUに対して、モノの貿易における大幅な赤字の是正を求めている。Eurostat(欧州統計局)によると、2024年のアメリカの対EU貿易赤字は約2,000億ユーロ(約2,264億ドル)に達しており、これを背景にトランプ政権は関税措置を正当化している。
具体的には、アメリカは以下のような要求をEUに突き付けていると報じられている。
- 食品安全に関するアメリカ基準の採用(例:遺伝子組み換え作物の承認)
- デジタルサービス税の廃止
- 非関税障壁の撤廃
- アメリカ産天然ガス(GNL)や大豆の輸入拡大
こうした要求は、EUの主権や規制の独立性に深く関わる内容であり、交渉が難航する要因となっている。

EUは「関税ゼロ」提案も視野、対応に幅を残す
EU側は対抗措置の準備をしつつも、依然として交渉による解決を目指している。関係者によれば、EUは以下のような譲歩案をアメリカに示しているという。
- 工業製品に対する関税を相互にゼロにする包括的協定
- アメリカ産LNG(Gas Natural Licuado)や農産物の輸入拡大
- 鉄鋼の過剰生産能力問題における中国への圧力を共有
これらの提案は、交渉の継続と経済協力の維持を目的とした「相互利益型」の解決策であるとEU側は説明している。
さらに、6月初旬に予定されているパリでの米欧首脳会談に向け、Sefcovic-Greer間の協議はその前段階として位置づけられている。
ポーランド副経済相「交渉戦術の一環」と冷静な姿勢も
今回の50%関税提案に関しては、EU内部でも「交渉術の一環」とする見方もある。ポーランドのMichal Baranowski副経済大臣は、ブリュッセルでの記者会見で以下のように発言した。
「一部の国は非公開で交渉し、他の国は公の場で圧力をかける。これは交渉術であり、すぐに実行されるとは限らない。」
Baranowski氏は、7月初旬まで交渉が続く可能性を示唆し、トランプ政権による発言が即座に政策に転化されるとは限らないとの見解を示した。
EUの対応:報復関税も視野に、交渉継続の姿勢を強調
Comisión Europeaはこれまでも繰り返し、対話と交渉による解決を優先する意向を示している。ただし、協議が決裂した場合には、対抗措置を含む選択肢を排除しないとしており、準備は進めている。
過去にもEUは、アメリカが鉄鋼とアルミニウムに関税をかけた際、Harley-Davidson社のバイクやアメリカ産ウイスキーなどに報復関税を課して対抗した前例がある。
今回も同様に、アメリカの政策が実行された場合には、World Trade Organization(WTO:世界貿易機関)の枠組みの中で、法的手段を含めた対応を取るとみられる。

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