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電気通信法改正案、7月の上院可決へ向け調整進む
メキシコ連邦議会上院では、電気通信および放送分野における包括的な法改正案が2025年7月に可決される見通しである。この改正案は、大統領府から提出され下院で承認されたものであり、Javier Corral上院議員(Justicia委員会委員長)によれば、現行案には大幅な修正が加えられる予定である。
主な修正点は、Agencia de Transformación Digital y Telecomunicaciones(ATDT:デジタル変革・電気通信庁)の権限縮小と、Instituto Federal de Telecomunicaciones(IFT:連邦電気通信院)の機能の一部をSegob(Secretaría de Gobernación:内務省)やSICT(Secretaría de Infraestructura, Comunicaciones y Transportes:インフラ・通信・運輸省)など他省庁へ移管する構想である。
Corral議員は、5回にわたる専門家、学識経験者、業界団体との対話を経て、今回の法改正案には「国家による検閲の懸念を払拭し、権力の集中を回避する措置が盛り込まれる」と述べた。
ATDTの権限縮小と新たな規制機関の設置構想
当初の法案では、José Merino氏が率いるATDTが、技術的審査を要する通信規制権限を独占する設計となっていたが、この点に対して業界関係者や市民団体から強い懸念が寄せられていた。Corral議員は「ATDTが裁定者であり、同時に競争者となる構図は公平性を欠く」と指摘している。
具体的には、国営企業であるCFE(Comisión Federal de Electricidad:連邦電力公社)やAltán Redesが通信市場で直接的な競争者となる中で、ATDTが唯一の規制主体となることは、「国家による市場支配」に繋がる可能性があった。
これに代わる新制度として、5名の専門的能力を持つ技術者から構成される新たな規制機関を創設する構想が検討されており、これらのメンバーは大統領によって指名され、上院の承認を経て任命される。ただし、従来のIFTと異なり、任命者が知識評価試験を受ける必要があるかどうかは未定である。
IFTの財政難と法改正への影響
現在、IFTは運営上の厳しい財政制約に直面している。地元メディア「El Universal」によれば、Secretaría de Hacienda(財務公債省)からIFTに割り当てられた年間予算は1,680百万ペソにとどまり、この予算は2025年6月までの給与支払いを賄うに過ぎないとされている。
一方で、IFTは今年第1四半期において、espectro radioeléctrico(周波数スペクトル)の使用料などから1兆8,800百万ペソを徴収しており、これは当初の歳入見込みを1,100百万ペソ上回る実績である。
このような状況下でIFTの役割が縮小されることは、国内通信網の中立性や公共性に対する影響が大きいとの声もあり、Corral議員は「財政構造の見直しとともに、持続可能な規制体制の設計が求められる」と強調している。
規制強化から自由化へ:ブロッキング条項の撤廃と新たな保障
法案の中でも特に物議を醸した第109条の削除が盛り込まれる予定である。この条項は、政府が一定の条件下でプラットフォームやアプリケーションへのアクセスを制限できるとする内容で、言論の自由や国際条約(T-MEC)への違反の恐れが指摘されていた。
この規定は、複数の市民団体や報道機関によって「国家による検閲の温床」として批判されており、その削除によって改正案はより民主的な情報アクセスを保障する方向へ転換される。
加えて、公共放送においても新たな社会的側面が盛り込まれ、medios comunitarios(コミュニティ放送)、medios indígenas(先住民放送)、medios afromexicanos(アフロ系メキシコ人放送)などの制度的支援が強化される見通しである。
Corral議員は「視聴者の権利とインターネットへの普遍的アクセスの保障こそが、今回の改革の社会的意義である」と述べている。

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